8月26日、行政から議会あて協議・説明があった件が、何とその翌日の市長記者会見で一転してしまった。報道を賑わしている、松代大本営跡の説明看板修正の件について、見直しするための検討会議に対し、そのスタート前から市長は不満を示しているのだ。



    経緯を要約すると、松代大本営跡の説明「パンフレットの増刷にあたり、以前から全てが強制的ではないなどの指摘が来ていたことから、(略)現行の説明『延べ300万人の住民及び朝鮮人の人々が労働者として強制的に動員され』は、(略)「強制的」 という文字を取るとともに説明内容の全般を見直した。(略) 管理事務所から「パンフレットと説明板に相違がある」との連絡を受け、説明板の「強制的に」の部分を白いテープで覆」ったことが、問題となっている。

    これについては、議会には、市から次のような旨の説明があったばかり。


    説明板及びバンフレットの内容の見直しにあたり、庁内に検討会議を設置する。
    検討会においては、修正内容とともに関係団体や市民等 の意見をどのように反映するかなど、今後の進め方について協議する予定である。


    なのにその翌日、市長は記者会見で不満を述べている。


    検討委員会をやることも、私はあまり賛成ではない。そこまで踏み込まないというのが私の考えであるので、できるだけ早く、そういう問題に踏み込まない形での案内板の設置を考えている。
    http://www.city.nagano.nagano.jp/site/kisyakaiken/94960.html


    「踏み込まない」とは前後の文脈からすると、「長野市としては、いろいろな問題があったか、なかったかという論議はしない」ということであるらしい。すると、テープを貼って隠している「強制的」という文字を除いた新品の看板を設置することが、加藤市長の望む決着ということになる。または「延べ300万人の人々が労働者として強制的に動員され」と、「朝鮮の人々」の文言を削除するということなのかもしれない。そうだとすれば、小泉はこれらの方針には疑問を感じる。

    第一に、検討委員会設置に反対で、できるだけ早く、朝鮮人の強制的な動員の有無に踏み込まずに解決することを望むなら、検討委員会など設置せず、加藤市長の責任により看板を書き換えればすむことだ。(それがいいことだとは思わないが)

    第二に、今まで書いてあった動員の強制性を敢えて削除することが、得策であるとは小泉には思えない。おそらく加藤市長は、松代大本営を、左右の政論の具にしたくないとの思いがあるのだろう。それは小泉も同じだ。しかし、朝鮮人動員の強制性への言及を削除すれば、そのこと自体が、ますます松代大本営跡をめぐる論争を激化させる可能性がある。今、メディアが注目し報道しているのは、まさに「強制的」の文字をテープで抹消したからなのだから、この点は十分に考慮しなければならない。すでにネット上には、今回の一件を、右傾化する国政と関係づける論調が見られる。ネット上の署名運動も行われているようだ。対処を誤れば、全国的な論争に巻き込まれないとも限らない。

    第三に、長野市誌との関係がある。樋口副市長はこの件について、「長野市誌にも『強制』という記述がある。それが市の見解だ」と述べている。市長は「あったか、なかったかという論議はしない」と言うが、市が編纂した歴史書では、強制性に言及している。副市長の発言及び市誌との矛盾を突かれれば、合理的に説明するのは困難だろう。市長の個人的見解はともかく、行政の継続性の観点から、市誌の記述は尊重する必要がある。ということは、即ち、いまさら強制性を引っ込められないということだ。

    ではどう解決するか。カンタンだと思う。強制的な動員もあったし、そうでない労働もあったと、書く以外にない。バランスを取り直す以外にない。

    冷静に見ると従前の文章でも全く問題はなく、テープで隠す必要はなかったと、小泉には思える。強制的な動員は、「朝鮮人の人々」に対してのみではなく、「住民」に対しても行われたと書かれている。戦時体制下の当時、国家総動員法・国民徴用令による強制的な動員が行われたと見るのは常識であって「あったか、なかったか」ではなく、あったにきまっている。この種の話題で議論を呼ぶ「強制連行」という言葉の使用も、注意深く避けられている。そして「全て」が強制動員によってのみ推進されたとはどこにも書いていない。それなのに、電話の1、2本で事なかれ主義の役所に稚拙な対応を促し、新聞を騒がせているのだから、政治運動としてはこれほど効率的なものはない。長野市は、もっと毅然と対応するべきだった。

    加藤市長について、政策的にはともかく、政治手法については信頼してもよいと考え始めていた。結論ありきではなく、市民の声を聞こうとしているのではないかと。小泉がしつこく取り上げる市の木・市の花の問題について、市長は結論ありきの「踏み絵」の方向性を修正しようと試みた。
    http://koizumikazuma.blog.fc2.com/blog-entry-1403.html

    小泉は市長にこの件について会って訴えたところ、昨日8月27日の合併地域審議会と市長の懇談会の場で、市長から次のような発言があった。市の木、市の花の制定の件については、結論ありきの聴き方になり、ご迷惑をかけた。改めて、ご意見をお聞きしたいと。
    結果として、合併4地域のいずれも、従来の市の木・花で可とする意見だった。これには、小泉も妥協せざるをえない。アンケートをやっていないとか、すでに市の方針を示した後で形だけ問い直しただけとかの、不満は残る。しかし市長が「迷惑をかけた」とまで言うのは、よほどのことだ。合併4地域が不満を示さないのなら、これ以上小泉がでしゃばるべきではないだろう。落としどころというやつだ。

    ところが、その同じ日の記者会見で結論ありきの姿勢を、議論が始まる前から示している。どうしたことだろうか。再び勇気を持って、「迷惑をかけた」と舵を切りなおす勇気を示していただきたい。

    松代大本営跡坑内
    松代大本営跡(長野市ホームページから引用)

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