あなたが、長野市に対して、情報公開請求の申請をしたとする。ところが、それに対する長野市の情報公開のあり様に、あなたは不満がある。そういうときには、どうすればいいのか。
    長野市に対して、不服申立てを行うべきだ。第三者機関の「情報公開審査会」が、あなたの申し立てを審査し、長野市に対して答申してくれる。長野市の誤った情報公開条例運用を、正してくれる正義の味方だ。少なくとも制度上は。
    審査会の働きとはどのようなものかについては、次のブログでもうかがえると思う。
    (「信頼がなければ全てが虚しい」)
    http://koizumikazuma.blog.fc2.com/blog-entry-659.html

    ところで、これと同じ申立て人による、もう一つの不服申立てに対する答申が、6月25日に市宛てに提出されている。答申の趣旨は、今回も「棄却」。信濃毎日新聞の記事を読んだ読者も多いだろう。経緯の理解の一助として、引用しておく。


    (「信濃毎日新聞」抜粋)
    2施設建て替え公募意見の部分公開
    不服申し立て長野市が棄却

     長野市情報公開審査会は9日までに、市役所第1庁舎と長野市民会館の建て替えで、市が2009年に行った市民意見公募の内容について、市内男性からの情報公開請求に対して部分公開とした市の決定は妥当と答申した。市は答申を受け、男性の不服申し立てを棄却した。
     不服申し立ては同市川中島町の雑誌編集、野池元基さん(54)が行った。市民意見公募は、市が09年4~8月、2施設建て替えの基本的方針を聞くため実施、167人から意見が集まった。市は賛成が多いことを建て替えの根拠としているため、確認しようと、野池さんはことし1月に意見の原本を情報公開請求した。 市は3月、1人分ずつを紙で包み、意見内容が分からない状態で野池さんに示した。市側は審査会の意見陳述などで「文面や筆跡などを他の情報と照合することにより特定の個人が識別される可能性は否定できない」と説明。審査会も答申書で「意見や提案の内容から、氏名、住所などの個人を識別できる情報を部分的に除いたとしても、特定の個人を推測できる可能性がある」との判断を示した。
     野池さんはこれに対し「ほとんど非公開だ。情報を公開しないことで市民に生じる不利益を考えていない」と批判している。今後訴訟を含めた対応を検討するという。


    「文面や筆跡などを他の情報と照合することにより特定の個人が識別される可能性は否定できない」と市が説明し、「審査会も答申書で『意見や提案の内容から、氏名、住所などの個人を識別できる情報を部分的に除いたとしても、特定の個人を推測できる可能性がある』との判断を示した」と、信毎は要約している。
    ちなみに、答申全文は、こちら。
    http://www.city.nagano.nagano.jp/uploaded/attachment/38115.pdf

    小泉は、答申の中で、「筆跡」についてどのように判断したかがあいまいであると指摘したい。
    長野市は、「自筆の筆跡には、意見提出者の特徴が表れているものもあると考えられ、それらは『個人に関する情報』に該当するものと考えられる」と主張する。ところが、審査会は、この点についての判断を、明確な形では示さなかった。審査会は、こう言っているだけにすぎない。

    「本件対象行政情報が、不特定の一般に公開されることにより、意見提出者の身近な者や利害関係人であれば、意見や提案の内容から、氏名、住所などの個人を識別できる情報を部分的に除いたとしても、特定の個人を推測できる可能性があり、結果として意見提出者の権利利益を害するおそれが生じると考えることは妥当である。」

    この「本件対象行政情報」のうちに、「自筆の筆跡」が含まれるのかどうか。読みようによっては、どちらにでも解釈できそうな一文だ。
    筆跡を個人情報とする判断については、次のような判例がある。
    「もちろん,本件領収書には,作成者の特異な筆跡の現れたたぐいのものなど多種多様な記載がされている可能性もあるが,これについては,具体的に領収書の記載,体裁に関する個別事情とこれに関する関連事情が明確にされない限り,上告人主張のような非公開情報が記載されているか否かが不明確である。」
    (最高裁(第三小法廷)平成19年05月29日判決〔警察本部捜査費・捜査報償費に係る個人名義の領収書/滋賀県〕)

    要するに、特定の筆跡が特定個人を推定しうると行政側が主張するなら、それを個別に証明しろということだと、小泉は理解する。「おそれが生じると考えることは妥当」などと、何が言いたいのか分からない審査会答申に比べると、最高裁判所の示した判断はクリアーだ。お役所側に立証責任を負わせるのも、合理的でうなづける。
    もしも、個人の自筆の筆跡が、個人情報であり、情報公開条例の公開義務から外れるとするば、実務上も深刻な市民利益の喪失が予想される。つまり、お役人が手書きで書いた文書は、公開しなくてもよいという理屈になってしまう。ワードプロセッサー導入以前の公文書の多くは、手書きから起こしたものだ。さらに言えば、公開したくない文書は、意図的に手書きで作っておけばよいことになる。
    審査会は、筆跡が個人情報と認められる場合がどのような場合なのか、高いハードルを決め、きちんと見識を示しておくべきだったと、小泉は考える。私見では、氏名の自署として特にその書体に工夫があって、定常的に用いられているような、いわゆる「サイン」や花押以外は、個人情報として守るべき価値が低いと思う。例えば、「印鑑」印影は個人情報とされているが、ゴムの「氏名印」で推した名前が、ただちに個人情報に該当するかといえば、そうでないだろう。
    なお、次のような事例もある。
    (三重県情報公開審査会が、筆跡を非開示理由として認めなかった例)
    http://www.pref.mie.lg.jp/KOUKAI/tosin/300/tosin275.htm

    審査会のその他の判断と、結論として申立て人の主張が通らなかったことについては、やむを得ない面もある。但し、不服申立てを行うに至った申立て人の心情を、小泉は理解する。彼は、審査会や長野市が、情報公開条例の運用が適正であるといくら説いたとしても、納得しないだろう。その心中にあるのは、長野市への「不信」であり、それがある限り疑問は氷塊しないことも、既にブログで次のように書いた。再掲しておく。

    「一方で、市民に不信があっては、いくら十分に法規整備をおこなっても、結局はウラで何をやっているのかという疑念が払しょくされない。市役所の、つまるところは市長の、抜本的な意識改革こそが必要なのだ。誠意ある丁寧な市政が、求められている。」
    http://koizumikazuma.blog.fc2.com/blog-entry-659.html


    ご高覧ありがとうございます。お疲れさまでした
    にほんブログ村 地域生活(街) 中部ブログ 長野(市)情報へ
    ↑  CLICK!!   ↑

    関連記事
    コメント:
    Re: タイトルなし
    新井秀一様
    コメントありがとうございます。
    ブログ本文で引例した三重県の事例です。

    行政側主張
    「本件対象公文書に記載された情報のうち研修教員名、日付け及び講座名を除く記入部分(以下「本件記入部分」という。)は、その内容や相当量の筆跡から、研修関係者にとっては個人を識別し得る情報であり、これを開示することにより、研修教員の氏名の開示と同様に、個人の私生活上の権利利益を害するおそれがある。」

    情報公開審査会の判断
    「...また、本件対象公文書における日付けや講座名の筆跡は既に開示されているところ、その量の多寡をもって本件記入部分のみ非開示にする合理性は乏しいと考えられる。したがって、本件記入部分のうち、研修教員の職歴や校務分掌に関する記述は個人を識別し得る情報であるが、その他の記述は個人を識別し得る情報とは認められない。」

    ...というわけで、三重県は公務員が作成した公文書上の筆跡を、個人情報であると主張しています。
    審査会も、すでに別件で筆跡を開示しているからという理由で、その主張を退けているわけで、「公文書上の公務員の筆跡は個人情報ではなく、開示義務がある」とは言っていないわけです。

    意図的に手書きで公文書作って、非公開決定という離れ業も、リクツの上ではありうるわけです。
    小泉一真(こいずみかずま:長野市議)│URL│08/13 13:43│編集

    公務中の公務員が作成した手書きの行政文書にも「筆跡は個人情報」という主張がなされるのかは良くわかりませんが、「筆跡は個人情報」と自ら言ってしまったおかげで、逆に別件においても市民からそのような主張がなされたら、市側はどんな対応をするのでしょうか?(などと考えてしまいました)
    新井秀一│URL│08/12 14:25│編集
    コメント:する












    管理者にだけ表示を許可する?

    トラックバック:
    トラックバック URL
    →http://koizumikazuma.blog.fc2.com/tb.php/692-1cfeebde
    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)